この記事で分かること
結論:認知症の症状は、「もの忘れ」だけではありません。
一般に、中核症状(記憶・判断・見当識などの認知機能の低下)と、 行動・心理症状(BPSD)(怒りっぽさ、不安、徘徊、妄想、幻覚など) に分けて整理すると理解しやすくなります。
認知症の症状は、大きく2つに分けて考えるとわかりやすい
1)中核症状
脳の働きの低下によって起こる、認知症の基本となる症状です。
- 新しいことを覚えにくい
- 時間や場所がわからなくなる
- 計画や判断が難しくなる
- 会話や段取りがうまくいきにくくなる
2)行動・心理症状(BPSD)
中核症状に加えて、不安や混乱、環境変化、体調不良などが重なって起こる症状です。
- 怒りっぽくなる
- 落ち着かない
- 徘徊
- 妄想
- 幻覚
- 昼夜逆転
- 不眠
- 意欲低下
理解のコツ
認知症は「もの忘れだけの病気」ではなく、 認知機能の低下と、その影響による行動や心理面の変化が重なって現れる と捉えると全体像がつかみやすくなります。
認知症の初期症状で気づきやすい変化
初期には、本人よりも家族や周囲が違和感に気づくことがあります。 よく見られるのは次のような変化です。
同じことを何度も聞く
さっき聞いたことを忘れて、同じ質問を繰り返すことがあります。 単なる「うっかり」よりも、出来事そのものを覚えていないように見えるときは注意が必要です。
しまい忘れ・置き忘れが増える
財布や鍵、通帳などを置いた場所が分からなくなり、「盗られた」と感じることもあります。 記憶の低下に不安が重なると、もの盗られ妄想につながる場合もあります。
料理・買い物・手続きが難しくなる
複数の工程を順番にこなすことや、金銭管理、予定管理が負担になりやすくなります。 以前は普通にできていた家事や支払いで迷いが増えると、初期サインとして気づきやすいです。
日付や曜日、場所があいまいになる
今日は何日か、どこへ行く予定だったか、今いる場所がどこかなどが分かりにくくなることがあります。 進行すると、時間 → 場所 → 人物の順に見当識障害が目立つことがあります。
趣味や外出への意欲が下がる
以前より外出を面倒がったり、人づきあいを避けたりすることがあります。 認知症の初期には、抑うつや意欲低下が前面に出ることもあります。
初期に気づきやすいサイン
- 同じ話や質問が増えた
- 財布や鍵の置き場所が分からなくなる
- 料理・買い物・支払いの段取りで迷う
- 日付や場所の混乱が見られる
- 外出や趣味への意欲が落ちた
進行の一般的な目安
認知症の進み方は、原因疾患や個人差によって大きく異なります。 そのうえで、一般的な目安としては次のように整理されます。
| 段階 | 特徴 | 生活への影響 |
|---|---|---|
| MCI(軽度認知障害) | 認知機能の低下はあるが、日常生活はおおむね自立 | 忘れっぽさや段取りの遅さはあるが、認知症とまでは言えない状態を含む |
| 軽度 | もの忘れや段取りの悪さが増える | 家計管理、服薬管理、予定管理などで支援が必要になり始める |
| 中等度 | 見当識障害、会話のかみ合いにくさ、妄想や徘徊などが目立つ | 生活全体で見守りや介助が必要になることが増える |
| 重度 | 意思疎通が難しくなる | 食事、排せつ、移動などで全面的な介助が必要になることがある |
補足
MCI(軽度認知障害)のすべてが認知症に進むわけではありません。 また、進行段階はあくまで一般的な目安として捉えるのが安全です。
種類別にみる認知症の症状の違い
認知症は1つの病気の名前ではなく、いくつかの原因疾患をまとめた呼び方です。 そのため、原因によって症状の出方に違いがあります。
アルツハイマー型認知症
もっとも多いタイプです。 初期には新しい出来事を覚えにくい症状が目立ちやすく、 少しずつ進行していくことが多いとされています。
慣れた場所での道迷い、同じ話の繰り返し、金銭管理や家事の難しさなどが見られやすいです。
レビー小体型認知症
特徴的なのは、認知機能の波、幻視、パーキンソン症状などです。
「今日はしっかりしているのに、別の日はかなり混乱している」という揺れが見られたり、 実際にはいない人や動物が見えると話したりすることがあります。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血など、脳血管障害の影響で起こります。 症状は障害された部位によって異なり、段階的に悪化することもあれば、 白質病変などにより徐々に進む場合もあるなど、経過に幅があります。
歩行障害や意欲低下が目立つこともあります。
前頭側頭型認知症
比較的若い年代で見られることもあるタイプで、 性格変化や行動の変化が目立ちやすいです。
同じ行動を繰り返す、社会的に不適切な言動が増える、こだわりが強くなるなど、 もの忘れより先に行動面の変化が前面に出ることがあります。
| 種類 | 目立ちやすい症状 | 特徴 |
|---|---|---|
| アルツハイマー型 | 新しい出来事を覚えにくい | ゆっくり進行しやすい |
| レビー小体型 | 認知機能の波、幻視、パーキンソン症状 | 日によって状態の差が出やすい |
| 血管性 | 歩行障害、意欲低下など | 障害部位により症状が異なり、経過にも幅がある |
| 前頭側頭型 | 性格変化、行動変化 | もの忘れより行動面が目立つことがある |
家族が気づきやすい「受診を考えたいサイン」
次のような変化が複数見られるときは、早めに相談を考えたいタイミングです。
- 同じ質問や確認が増えた
- お金や薬の管理が難しくなった
- 料理や家事の手順で混乱する
- 日時や場所が分からなくなることがある
- 怒りっぽさ、不安、不眠、妄想などが目立つ
- 以前より急に元気がなくなった
- 道に迷う、帰れなくなることがある
受診を先延ばしにしすぎないことが大切です
「まだ大丈夫かも」と様子を見るうちに、支援につながるタイミングを逃してしまうことがあります。 認知症かどうかを家庭だけで判断しようとせず、 かかりつけ医、もの忘れ外来、地域包括支援センターなどに相談することが大切です。
家族の接し方で大切なこと
否定や訂正を急ぎすぎない
認知症のある方は、不安や混乱の中で発言していることがあります。 間違いをすぐに正そうとすると、かえって不安や怒りが強くなることがあります。 まずは気持ちを受け止めながら、落ち着いて対応することが大切です。
できないことより、できることを見る
すべてを取り上げるのではなく、本人ができる部分を残しながら支えることで、 安心感や自尊心につながりやすくなります。
環境をシンプルに整える
予定表、カレンダー、薬の管理方法、物の置き場所などを分かりやすく整えると、 混乱が減りやすくなります。 周囲の声かけも、短く、わかりやすくするのが有効です。
急な変化は受診を優先する
急に症状が強くなったとき、幻覚や妄想が急に目立つとき、 発熱・脱水・薬の影響が疑われるときは、接し方の工夫だけで様子を見るのではなく、 早めに医療機関へ相談することが大切です。
認知症と思っていた変化の背景に、せん妄、感染症、体調悪化が隠れている場合もあります。
家族が意識したい接し方
- すぐに否定・訂正しすぎない
- できないことだけでなく、できることにも目を向ける
- 予定や物の配置をシンプルに整える
- 急な変化は医療相談を優先する
FAQ
Q. 認知症の最初の症状は「もの忘れ」だけですか?
いいえ。 もの忘れは代表的な症状ですが、段取りの悪さ、意欲低下、怒りっぽさ、不安、 日時や場所の混乱などから気づかれることもあります。
Q. 年齢によるもの忘れと認知症はどう違いますか?
加齢によるもの忘れでは、体験の一部を忘れることが多い一方、 認知症では体験そのものを覚えていないような状態が見られることがあります。
また、日常生活への支障が出ているかどうかも大きな違いです。
Q. 認知症の症状は全員同じように進みますか?
いいえ。 原因疾患や個人差によって、症状の出方や進み方は大きく異なります。 進行段階はあくまで一般的な目安として捉えるのが安全です。
ケアオファーでできること
認知症の症状は、本人にも家族にも分かりづらく、 「受診のタイミングが分からない」 「介護サービスや施設を考えるべきか迷う」 と悩みやすいテーマです。
ケアオファーでは、認知症の症状理解を前提に、 介護の進め方や施設検討で迷いやすい点を整理しやすくする情報提供 を行っています。
